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HAL4550

モノラル再生考

このところ、ずっとモノラルレコードを聴いているので、日頃の疑問を考察してみた。
独りよがりな考えで、呆れられると思うが、お付き合い願いたい。

モノラルレコードをステレオカートリッヂで再生すると、大概は左右から異なる音が聴こえてくるので違和感を覚える。しかし、考えようによっては録音時状態とは異なるものを左右の耳で聴くのであるから当然のことであると云える。
両耳の距離は15センチほど離れて音波をキャッチ、一般には近似値的に同じ音が聴こえると仮定する。器官の病的あるいは加齢による左右差も少なくないと考えるが、音楽を楽しむ段階で自動補正され同じ音が聴こえていると脳では認識される。
理屈っぽい表現で申し訳ないが、この自動補正して同じ音として認識されるところにポイントが在る。両耳が15センチほど離れているのは位置の特定に、眼球の左右差は距離7.5センチ、両耳の半分であるが、位置の特定と表情の認識に重要な役割を持っている。

話しを元に戻し、カートリッヂについて、モノラルレコードをステレオカートリッヂで再生すると針先の形状と太さによるコンタクトの問題が生じ、モノラルカートリッヂ25ミルで再生しないと録音時状態とは違う音に成ることは経験済みである。

ステレオカートリッヂで再生すると興味深い事象も発見できる、左チャネルからサーフェスノイズが大きく聴こえるレコードが有るかと思えば、稀に右チャネルから聞えるものもある、カートリッヂのインサイドフォースやトラッキングエラー角によりレコード溝が削られ或いは変形しているためだ。
これらは、そのレコードの歴史を副次的に記録している訳だ。勿論、モノラルカートリッヂでは殆ど聞えないかサーフェスノイズとしてステレオカートリッヂより心地良い音で再生される、同じノイズなのに不思議なものである。



長々と書いたが、本題はこれからである。モノラル専用の装置を所有されている数寄者は別として、大抵はモノラルのカートリッヂでスピーカはステレオという構成が多いだろうと思う、拙宅も同様である。これまでに左チャネルのみで再生したこともあるが、長続きしないのは視覚的な不自然さ故と思っていたが、深く考えると、そうでは無いようである。

モノラルのレコードを一本のスピーカで再生するより、二本のスピーカで再生した方が、良い音が得られるからである、しかし、この結論に至るまでは観念的な問題が邪魔していたように思う。確かにステレオ、特に拙宅の環境ではモノラルをJBL4550のマルチチャネル、マルチアンプから再生していたからである。マルチチャネルでモノラルを再生するのは非常に難しい、空間合成が旨く行かないから、音像が大きくなったり、錯覚による前後感が出てくる、これらは複数アンプの位相、レベルなどがワンフォーカスに合致しないからである。また、今までそのような観点から調整もしなかったからに他ならない。恥ずかしい話しである。

以前モノラルレコードを聴いて、二本のスピーカの存在を忘れると、書いたことがある。拙宅のTelos2500とDD66000は納品時の左右差が比較的少なく、勿論、設置環境による左右差はあるが、とにかく、このシステムでモノラル再生をしたことは無かった。
この頃DD66000にEMT927を接続できるように4PコネクターとWEエナメル二芯線で接続した。アンプとスピーカの左右差が少ないと、このようにモノラルレコードが再生されるのだと感心した、目から鱗が取れた。

音像がセンターにほっかりと浮かぶ、当り前の話であるが一本のスピーカとは明らかに違う、モノラルのフォノグラムと言うべき再生音である。これが二本のスピーカの存在を忘れさせる、と言うことだった。

一本のスピーカでは左右差は皆無だが、二本のスピーカであれば厳密には左右差があり、両耳の左右差と相俟って、空間合成される微妙な立体感のあるフォノグラムが得られる。面白いものである、マルチチャネルでは得られなかったプチ感動のはなし、これはステレオによるモノラルレコード再生を正当化しようとするものではなく、それぞれの楽しみ方の話であることを付け加えておく。

最後にディスカウ/ムーアの冬の旅(ALP1298/1299初期盤)は今の季節に聴くと感動が深く理解を助ける。
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by hal4550 | 2011-11-02 13:08 | EMT