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HAL4550

オペラ三昧

年末年始はニューヨークMETでオペラ三昧の日々を過ごす。
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初日は椿姫でビオレッタMarina Poplavskaya、アルフレードMatthew Polenzanl、それほど期待できないかも、と思うのは早計だった。NewYearEveで指揮がNosedaだから、まあ良いかと半ば諦めていた。
朝下見に行ってMETのCDショップでAnna Netrebkoの椿姫のDVDが流れている、ポスターと同じ場面があり、おゃっと思った。
このTraviataの演出はWilly DeckerのMETデビューと書いてある。あの舞台をそのままMETに掛けるとは予想外に感激感激。
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彼女は去年もMETでTurandotのタイトロールを歌っている。想像であるがWilly DeckerがMET進出にあたりアンナ・ネトレプコと同じプリマを生み出すつもりかも知れない。兎に角、楽しみが増えた。

オペラが跳ねてカウントダウンの御約束事を済ませてホテルに帰って来た。

椿姫
これほどに素晴らしい椿姫は初めてであった。椿姫の物語は良く知っているつもりだったが、Deckerの演出にはやられてしまった。アルフレッドの父に言われて身を引くビオレッタの三文芝居と思っていたが、第三幕の死期の場面が30分も続きオペラの白熱した中心の場とは知らなかった。また、医者のDoctorはビオレッタの心の鏡になって真実の愛とは何かを悟り復活へと希望を続く物語であることをDeckerは知らしめてくれる。
主演のMaria Poplavskayaは矢張り、ロシヤの歌手で素晴らしい演奏をしてくれた。勿論、アルフレッドも素晴らしかった。指揮のNosedaはベルディの田舎臭いブンチャッブンチャッを重ね泥臭い音楽から、第三楽章は崇高な精神への昇華とでも云うべき素晴らしい演奏であった。今後暫らくは語り草になる演奏に違いない。
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METでのトゥランドットはLuiの役をやったと書いてあった。Deckerの演出はネトリプコの時と全く同じで、時計が全てのモチーフになっており、また、ビオレッタは下着姿でずーっと歌う演出や仰向けや寝転んで歌う場面も数多くあり、このビオレッタ役は誰にでもは、出来ないだろう。暗示的なモチーフも考えさせられるが、かなり面白い演出だと思った。

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元旦はマチネでドビッシーのペリアスとメリザンド、これは10月ぐらいから期待して、最高の席を確保した。指揮がサイモン・ラトル、本当に振るか心配だが、それにメリザンドをKozenaが歌う。コジナの舞台が見れるとは思ってもいなかったので二重に嬉しい。

ペリアスとメリザンド(ドビッシー)
お目当てはサイモン・ラトルとコジーナ、ラトルは乱暴に言うと、つわものMETのオケを長年の手兵のように従え、エネルギッシュな演奏を聴かせてくれた。

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コジーナはその美しいソプラノをラトルの紡ぎ出す音楽で、一層魅力的なものにした。物語そのものが暗くて重くて分かりにくい上に、演出が中途半端な現代劇になっていた。このオペラに私が明るくないので理解が間違えているかもしれないが、結婚と不倫とDV(家庭内暴力)をドタバタに描いている。演出はTraviataのようにもっと、象徴的なものか、いっそ古典的な演出にするべきで、今まで有名なカラヤンのペリアスとメリザンドしか聴いたことのないわたしにとって物語は退屈なものであったが、音楽は素晴らしかった。昨日のTraviataも良かったが、同じオケとは思えない変身ぶりで、木管はMET独特の音が見え隠れするが、終いにはラトル長年の手兵のように従えてしまった。コジーナとラトルは私生活でも夫婦なので、コジーナのためにラトルが特別出演したのかと思うぐらいである。兎に角、良かった。

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そして、夜は、去年とおなじ演出で魔笛、これも楽しい舞台になりそう。

魔笛
魔笛は今まで何十回も観ている。そして、今回演出の魔笛も一昨年に続き二回目である。Parterre Boxの前列オケがバッチリ見える席が取れた。当然、舞台に最も近い10mと離れていない。
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こんなに近いと当然、音のバランスは悪いが、逆に言葉やオケの音が一音一音はっきりと届く。音のハーモニーと解像度は比例しないと云う事を痛感した。スピーカから聴く場合は音のバランスやハーモニクスを第一とするが、演奏会の場合は違うような気がする。オペラの場合は言葉がはっきり聞こえた方が絶対に良い。
さて、全く同じ演出だが随所に細かい工夫がなされ楽しかった。特に、夜の女王は、あのコロラツーラを難無くこなし素晴らしい出来だった。また、タミーナもずいぶん出来が良かった。オペラの出来は上演回数に比例するかも知れない。
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by hal4550 | 2011-01-01 06:45 | NYC