HAL4550

四十年越しの指輪




東京へ行った折新宿の伊勢丹へ寄った。待ち時間でディスクユニオンへ行ってみた、伊勢丹の隣のビルである。クラシックレコード売場は沢山の人で賑わっている。わたしは箱から一枚一枚探すのが苦手である。時間は掛かるし余計なものを沢山買ってしまうからだ。それよりも店が自慢の飾ってあるレコードから選ぶ方が楽であるし店員と二言三言会話をすれば実はと奥から取って置きを持ってくること必定である事を長年の経験で知っている。



SXLの名盤クライバーのフィガロの結婚とカラヤンのアィーダとアンセルメ・パリ管のシェラザードいずれも初期盤を買った。盤は綺麗で値段もかなりのものだったがレコードは出会いが肝心である、これ等は何れも三組余り持っているのだが見ると欲しくなる性質なので仕方ない、店員とすっかり仲良くなってしまった。帰り際レジ横に指輪が沢山並んでいる、その中で一際分厚いセットがある、ひょっとしてベームの指輪ではないかと思い見せてもらうと四十年前に歯医者さんのところで何回も聴かせて貰ったあの皮張表紙の指輪だった。あの頃はジークフリートもボータンも何にも分らずただあの皮張りのレコードは一生働いても買えないだろうと諦めていた薄給の若者だった。



今はバイロイトでもパリでも行けるが皮張りのレコードは目の前に現れることは無かった。手にとって見てみるとずっとベームの指輪と思い込んでいたものがショルティの指輪でキングから出ていたものと分った。指輪なら三十組余りあると思う、今更日本盤の指輪を買ってどうするのだと言う気もするが四十年来の思い出に蓋をすることは出来ない。部屋の片隅に置いても良いと云う気持ちで、これも下さいと言うと値段は三千円と云う、聞き直しても三千円と云う、十六枚組BOXのせいか中々売れないレコードの類らしい。宅急便で送って貰うことにした。

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持ち帰ったフィガロの結婚を聴き終ったころ宅急便が届いた。写真を撮りブログを書きながらワルキューレから聴きたいと思いボックスを開けると四五六と並んでいる、やはりこの人もあそこが好きなのかと思った。愛蔵家番号が36番であるからかなりのファンであったのだろうレコードは綺麗で傷一つ無いが解説書はボロボロである。メモ用紙も入っている、岐阜大垣で鉱泉所を経営していた人だろう伝票の裏に色々メモ書きが残されている、前の所有者を色々推理するのも楽しい事だ。

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今更キングの日本盤を買ってどうするんだという気持ちは杞憂に終わった。聴いて見ると素晴らしい音がする、ワルキューレの騎行はやはり素晴らしい。デッカ・デコラはこう云うレコードを掛けると素晴らしい音がする。四十年前の二十歳代だった自分の思い出が交錯する。確かパトリシァン800のオリジナルをマランツ9とマランツ7にEMT927DSTで聴かせて貰ったと思う。デッカ・デコラと出会って本当に良かったと思う。あれこれ悩まず音楽に没頭できる、とは云えマニアの性がむくむくと首を持ち上げてこない事もないのだが今日は幸せである。










by hal4550 | 2015-08-31 13:00 | レコード