HAL4550

ザルツブルグ

トロバトーレ





元々予定には無かったが、いつか行きたいと思っていたザルツブルグヘ来た。切っ掛けは簡単で真ん中の14日が丸々空いたからである。三日連続でワーグナーも良いかと神々の黄昏のチケットを取るつもりでいたがウィーンのチケットオフィスにメールするとザルツブルグの最上席が二席空いたとオファーが来た。ザルッブルグ音楽祭の目玉でトロバトーレのレオノーラをアンナ・ネトレブコがやると云う、それにオケは当然ウィーンフィルでノセダの指揮、最初はルナ伯爵でドミンゴも出るとかカフマンもと云われていたので神々の黄昏は諦めて俄然ザルツブルグへ興味が移った。ルナ伯爵をドミンゴは降りてカフマンはドタキャンと舞台が始まる前に申し訳なさそうな案内があったのは残念だった。


話を元に戻すと、トリスタンの幕間にウィーンへ携帯メールで予約したのは心配だったが、最終的にザルツブルグ祝祭歌劇場のオフィスにチケットを預けることで解決した。これは今までとは違う女の子が担当してくれたのでスムーズに進んだ。価格は表示価格430EUがプレミアで900EUで手に入った。最も取り難いザルッブルグのチケットが前日に二倍のプレミアで取れたこと自体が奇跡である。ザルツブルグヘ着くまでが半日仕事で時刻表通りだと五時間で着く筈がバスを乗り継ぎアウトバーンを走り列車に戻り七時間近くかかった。ホテルは駅の横のRAMADAホテル、先にチェックインして着替えてタクシーで15分ザルッブルグ祝祭歌劇場についた。


ザルッブルグは大きな街で都会的な喧騒と観光地の賑わいが同居する処でバイロイトとは正反対の街である。祝祭歌劇場も町中にあり観光客も多い、最もチケットが取り難い劇場である事も理解できる。チケットの受け取りに指定された夜間オフィスは十九時五十分にならないと開かないそうだ、それまで三十分あるのですぐ横にある1890年創業のNiemetzに入った、歌劇場に入る人達の溜り場のようだ。お薦めはと聞くと珈琲とザッハトルテと云うので名前だけは知っていたバッハトルテ、簡単に言えばホイップクリームを添えたチョコレート・ケーキを無理して完食した。それを見ていた上品な年配の女性(男連れ)に笑われた。帰り際に会釈すると会場でお会いしましょうと話しかけてくれた。


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二十時半からトロバトーレが始まった。満席である、一席も空はない。私は良い席だったが左右を小錦二人に占領された感じで超デブに挟まれてしまった。ザルッブルグも横に広い劇場で奥行きはそれほど無いように思える。それでもキャパシティは50x50の二千五百席ぐらいだろうか、通路もスロープの傾斜がついていて歩き難い。

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ノセダはMETで何回も聴いているのでお馴染みであるがウィーンフィルを振るとは思わなかった。明日はムーティとオッターがバィヨリン協奏曲をやるらしい。海外演奏会の初心者が多いようだ、私が会場で話をした夫婦も初めてという。誰でも最初は必ずあるものだから最初がザルッブルグとはラッキーな人々だ。劇場で目を引くオケピットだが随分狭くて浅い、背の大きい人や楽器がピットからこぼれている。コントラバスが五本で素晴らしい低音弦を聴かせてくれる。トロバトーレとは吟遊詩人マンリーコのことでMELI、ルナ伯爵はArtur Rucinski、ジプシー女のアズチェーナはSemenchuk、そしてレオノーラはAnna NETREBKOであった。演出は例にもれず奇抜なもので大型の絵画が壁となって舞台中を動き回る。アズチェーナは素晴らしいメゾで美声を披露したが逆に演出の問題点をさらけ出すことが不満であった。最初の場面から美術館をフランス人団体が動き回り、途中で中世の服装へと変わるので想像がついて行けない。辛うじて聖母子像や子供の絵が四枚揃ったところでアズチェーナが歌いだすルナ伯爵の弟とジプシー女の子供を取り換えて焼き殺された場面を表現していることが分かった、必然性は勿論ない。



話をウィーンフィルに戻すと、いつものウィーンフィルとは少し違って音に一段と張りがある、柔らかい弦のイメージであったが鋭さとしなやかさを併せ持つことがウィーンの特徴であることを改めて知った。トロバトーレの管楽器の良さもはっきり出ている。前日のバイロイトのトリスタンと比べても良い勝負だ。バイロイトとの違いは観客にある。ウィーンでも目にすることであるが、アリアのあと直ぐに拍手が鳴り止まないことである。苦い顔で絶対に拍手をしない人々も大勢いるが拍手によって音楽の進行を止めていることに気が付かない観光音楽ファンには困ったものだ、バイロイトには観光客が来ないので絶対にそのようなことは在り得ない。ちゃんとマナーを弁えている者たちが集まるのがバイロイトであることがよく分かる。マンリーコ三幕のハィCは歌い切らないうちから拍手の渦であり、拍手が終わらないからNosedaも音楽を先に進められない、でもみんな分かっているからじっと待ってくれている。

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途中休憩一回をはさみ零時には終わった。休憩の様子がMETやスカラとは違う、シャンパンやワインを片手に表の通りまで、ポワイェに居る人は無くみんな表の通りで風に当りながらおしゃべりに花を咲かせている。ザルツアッハ川に吹く風が通りを抜けて歌劇場にも流れてくる。八月の暑い夜を吹き抜ける涼風である。バイロイトの森を抜ける風とは比べ物にならないが僅かな風を求めて人々は歌劇場前の通りに抜け出るのである。今回も体は物凄く疲れているが感覚は妙に鋭くなっているのに気が付く。ものの本によるとザルツ(塩の)砦ということのようだ、昔から産出される岩塩をヨーロッパ各地へ運ぶ川がザルツァッハでその通行税を大司教が集め街を支えていた、そういうところでモォツアルトは産れ、ここで二十五歳まで育った。残念でもないがそのような類の観光地は一切行かないので知る由もないのだがインターネットのお蔭で知識は増える。

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ライトアップされた城壁や狭い岩肌に寄せ合って立っている旧市街地は青緑色で美しい。結局何処にも行かず列車でバイロイトへ戻ることになる。せめて、チョコレートだけは土産でも買おうかと思う、バイロイトには土産らしいものは何にもない、そこが良いのだが。ザルッブルグはお土産に事欠かない。   続く









by hal4550 | 2015-08-27 06:00 | その他