HAL4550

トリスタンとイゾルデ





ARVEANAホテルに真夜中に着いた、チケットは約束通りホテルに届いていたから安心した。280euを990euで買ったのは複雑な気持ちであるが、トリスタンが良く買えましたねと翌日の朝食バイキングで知り合いになった日本人たちから羨ましがられた。彼らは八年待ったそうである、それが四倍近くとはいえ買えたことは嬉しい。ホテルのインフォメーションボードにもチケットを売りたいと書いてある。正規料金で買うなら祝祭歌劇場の左手チケット・オフィス、ここはキャンセルになった僅かなチケットを当日分に限り13:30から売り出す。ここもプロの並び屋はいるが可能性は皆無ではない、根性があればチケット求むのカードをかざして二時ぐらいから待てば買えないことはないだろう。安く買えるか高く買わされるかは腕次第、ホテルで買うのが一番確実だろうがホテルは一切仲介しない当人同士の直接交渉、何れも本当に余っているのではなく転売を前提にしたシンジケートのチケットなので高く売ろうとするから座席表を持参して確認しながらの交渉が功を奏するかも、必ず現金現物引換えにすること。

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ぐっすり眠りバイキングの朝食を食べに降りて、そこで知り合った日本人夫婦と情報交換で昼食をご一緒する約束をした。それまでにパソコンの部品を買いに近くのメディアマートに行ったり、祝祭歌劇場まで下見に歩いて行った。地図をもらっていたが尋ね歩いて行ったので三十分程かかったが街並みが新鮮でとても楽しかった。アプローチの道から上方を見ると祝祭歌劇場の屋根が見える、途中にモネの睡蓮の池を模して作ってあるのは笑ってしまった。楓の街路樹のアプローチはそよぐ風がとても心地良かった。段々劇場に近づくと写真で見覚えのある風景が見える、とうとうバイロイト祝祭歌劇場に来たと云う実感が湧いてきた。直管トランペットで入場開始のファンファーレが鳴るバルコニーもある。

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建物が奇麗過ぎて不思議な気がした、暫くすると外灯も横に付いていたので初めて写真であることに気が付いた。外壁修復中で巨大な実物大の写真を貼り付けてある、さすが祝祭歌劇場である精巧な修復中の壁は見たことがない。ワーグナーの銅像前でデンマーク人のグループと話をしている内に十一時からトリスタンの事前説明会があると教えてくれた。チケットを提示するだけで入場できると云うので入ってみた。祝祭歌劇場の中は素晴らしい、横に長く奥行きは50列ぐらいか縦も40列ぐらいありそうだから二階の座敷牢を入れても2,300席がキャパシティだろう、結構大きなホールである。説明はドイツ語である、舞台の間口は真四角で初めて見る様式でワーグナーしかやらないから問題は無いのだろう。説明会には数百人が集まっていた。ドイツ語は全く分からないがトリスタンのことワーグナーのことは良く知っていたのでかなりの部分が理解できた、それでも一割ぐらいであるが舞台を見るうえで大切な情報を知り得た。

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12時半にoskarと云うレストランで約束した夫婦と会った。旅先で袖触れ合うも多少の縁と云うが食事をしながら色んな話をした。オペラの話は勿論だが仕事の話、子供の話、この年にならないと出来ない話はいくらでもある、話は尽きないが4時に祝祭歌劇場に着くためには2時までにはホテルに帰った方が良いと云われ夫婦と別れた。彼らは土産を買いに横のデパートによると云う。



夕方と云っても四時だとまだ陽は高く気温も30℃は超えているが日本のように暑く感じないのは湿度であろう、正装ではないが蝶ネクタイを締めて祝祭歌劇場へタクシーで向かった。ホテルからのバスも出ているそうだが面倒なのでタクシーを呼んでもらった。ごく僅かであるが正装の男性もいるが概ね自由な服装である、可笑しいのはちんちくりんの日本人が正装した姿である、本人は到って真面目に用意したのであるが似合わない、知ったかぶりしてガイドブックの受け売りはやめた方が良いと実感した。礼を失しない限り何でも許される、自分に似合う格好をしようと思った。ホテルを出る時に猿廻しを見て慌てて部屋に帰り金ボタンのブレザーにアイボリーのパンツを合わせた、リスボンで誂えたエメラルドグリーンのドレスシャツに蝶ネクタイは自分でも似合うと思っている、あるいは猿廻しに見えたかも知れない。

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テイレーマンの演奏は良い、バイロイトを上手く手なづけている。これが指輪だったら物足りないだろうがトリスタンなら丁度良く素晴らしい。いろんな人に今年の指輪の話を聞くと、ペトレンコの指揮は素晴らしかったそうである、残念なことペトレンコは2018年からラトルの後を継いでベルリンフィルの常任指揮者になることが発表されたからバイロイトは今年限りと云うことらしい。

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バイロイトの席はスロープになっていて通路は傾斜が付いている。オケピットは深く席からは見えないが音楽は上に立ち伸びる、特にワーグナーの金管楽器は素晴らしいものであった。勿論、弦も素晴らしく少々粗目であるがコントラバスのアルコは凄かった、ワーグナーらしく空気がそよぎ驚く。

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演出はマリック・エッシャーのだまし絵階段をモチーフに大道具で作った複雑な構造の可動式だまし絵階段である。残念ながら写真は撮れないのでネットで絵を拝借した。無限ループを使いながら愛情の破局は階段が突然落ちて行き来が出来なくなった様子を表現していた。大掛かりな舞台仕掛けを使った演出はとても楽しい。ソリストのトリスタンもイゾルテも良かった、マルケ王は若者で威厳に欠けるが歌唱は素晴らしかった。

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悪評の堅い椅子はやはり辛いし冷房は無い、時折森を渡ってくる涼風が涼しく感じるのもバイロイトならではである。途中二度の休憩はシャンパンを楽しみ、日本人夫婦とも話をした、多分ニューヨークであれば話しかけもしないだろうがバイロイトと云う所がそうさせるのであろう。みんな大変な思いでチケットを手に入れていることが分かり慰めあっている。たいがいは八年待ちと云うので280EUの席を990euで買うのはそれ程高い買い物ではないと云う気になってきた。ところでどこでもあるテキストの表示は無い、ドイツ語すらなくてブックを買わないとメロディだけが頼りである。ドイツ語以外のアナウンスもなくて推測するしかない。四時からスタートして十時半までの長丁場よくぞ耐えたと思う。これを指輪で四日連続私には修業が足りないので無理、早速ザルッブルグのチケット獲得に動いた。座布団持参の人も多い、終わってみれば暑さも椅子の堅さも気にならなくなったが兎も角ザルツブルグヘ行くことにした。ザルッブルグは八時半のスタートだからゆっくりでも間に合う、と思ったのが間違いだった。国際時刻表の読み方を知らなかったことに原因があるのだが、続きは後で書く。

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by hal4550 | 2015-08-26 06:00 | 演奏会