HAL4550

初期盤とオリジナル

先日、ジャズ愛好家の群れに混ざり込んでしまった。酒宴で初期盤を扱われている店主との会話が弾んだよしみで聞いてみた。

「ジャズの初期盤とはどんなものですか?」

亡とした質問に戸惑われて返事が返ってこない。

「クラシックの初期盤は高くても10万円を超えることはないが、ジャズの初期盤は一際高いと思います」

すると明解な答えが返ってきた。「初期盤は音がよくて希少価値があることは分りますね、それにジャズレコードはジャケットも重要なファクターになります、往々にして紙ジャケットが希少価値で高値が付きます。同じジャケットでもプレス工場に依っても違います」

「演奏の本質とは関係ない希少価値というもので値段が決まることがある訳です。これはクラシックレコードと違いプレス枚数が少なくマイナーなレコード会社が多い、それに新人の頃マイナーで録音したレコードが後年プレミアが付くのです」

ジャズレコード初期盤はオリジナル盤と言った方が正しいかも知れない。確かにクラシックはプレス枚数も多く、レコード会社も殆どが大手である。だから珍品が法外な値段で取引されることもない、有るかも知れないが私が知らないだけかも知れない。ジャズレコードはコレクターが居るがクラシックは沢山持っているマニアはいてもコレクターは少ないだろう。


わたしがオペラのレコードを買い始めた頃は海外盤に初期盤が数多くあったし、プレミアが付くことも無かった。レコードの新譜が消えて中古盤でも輸入盤が容易に手に入り易かった、しかし、初期盤が驚くほど高価になった時期が十年ぐらい続いた。そしていまは安価に落ち着いている。これはネットオークションが急速に拡がった所以でもあり、比較するとレコード店販売は相変わらず高価である。仕入価格もあるだろうし生活もしなければならないから商売となれば仕方のないことだ。

しかし、それが災いしてレコード屋で生活が立ち行かなくなり廃業する店も少なくない、気の毒なことだ。わたしはオークションで半分、レコード屋で半分を購入することにしている、支払う金額は三倍以上違うが、そのことに不満はなく、最近レコード屋が仕入れるものが段々少なくなって管弦楽や器楽ものに範囲を広げても、買えるレコードが無くなりつつあるのが気掛かりだ。



クラシックレコード、特にSXL初期盤が大量に出回ることがある、これを一手に扱っている知人がいる。もう十年近くの付き合いになるが、彼が面白いことを話してくれた。イギリスのレコード愛好家の貴族が亡くなるとコンテナで何台分のLPやらSPや蓄音器が出てくる。それを国内の業者やオークションで生計を立てている人にお願いして売ってもらっているが、整理するだけでも大変な労力のようだ。

その恩恵で綺麗な初期盤を安く購入できるようになったことは嬉しい反面、むかし高くで買ったレコードが十分の一ぐらいで落札されそうになると、反射的に高い値段を付けて落札してしまう。それでもレコード屋の三分の一程度の値段である。いつまで続くか分からない、クラシック初期盤のデフレスパイラルも嬉しさ半分である。
by hal4550 | 2012-11-14 06:00 | レコード