HAL4550

オルトフォン考

オルトフォン達が増殖し始めた、オーディオニクス時代からハーマン時代まで二週間で五本になった。

最初のCG25Dはシェル鳴きを抑えるために薄型シェルにマウントされていたが、今度は通常のG型シェルCG25Dである。
拙宅ではモノラルレコードをかけると歪むレコードが多い、しかし、ディスカウの冬の旅のように全く歪まないレコードも有るので、カートリッヂの相性かもと思って同時代のCG25Dを新たに入手したが、やはり結果は同じであった。もしやと思い針圧を5gにした、すると歪みはピタリと収まった。針圧が適正になくトレースが完全でなかったのである。EMTモノラルカートリッヂOFD25も同様の歪みに悩まされなかばモノラルカートリッヂは諦めていた。

歪みの原因は様々である、レコード溝の変形、アームの問題、カートリッヂの問題であるが、針圧を思った以上に印加してやることも大事なことのようだ。分っているが軽針圧に馴れきっているので5gは勇気が要る、過っては10gぐらいの針圧で愛聴されていたと思われる古いモノラルレコードだから今更神経を使うことは無いのに、全くだ。

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SPU-GEとSPU-Gを聴き比べて見た。それぞれに個体差があることは承知の上での感想だが、SPU-GE楕円針はレンジも広く聴こえて柔らかい感じである、低域中域高域ともにバランスよく広がりウイーンフィル独特の演奏を表現してくれるが、音楽に軽さを感じないわけには行かない。もっともSPU-GEだけ聴いていれば分らない事であり、数分間聴いていれば馴れてしまうのでもあるが。

SPU-G丸針は一言で言うと音色が美しい、歪を全く感じさせない、それがゆえにおとなしく聴こえるが、むしろSPU-GEの薄いベールに包まれたような音の柔らかさが擬音と疑わせるほどの美音である。必要な音は音域は全て出ている、SPU-GEに比べてストレートに表現される。SPU-G/GEは古いカートリッヂでそれぞれ遍歴を辿ってきたであろうが丸針と楕円針のスタイラスの特徴を良く表しており、今更わたしが検証しても新たな事実は出てこないだろう。
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しかし、Rigid Floatのアームにつけると少しばかり事情が違う。トレース中は針先ががっちりと溝に固定され、溝からはみ出ることは許されない。縦しんば溝からはみ出る為には溝と針先に大きな圧力が加わり歪みとなる。正確なトレースとピボッドの自由度が音域の安定感と歪を排除しているように思われる。オイルフロートにより針先の余分な振動がアームに伝わり跳ね返る共振を排除して純粋に針先が溝に刻み込まれた音源をピックアップして電気信号に替えて送り出す、一切の付帯音を携えることなく。丸針はスタイラスの形状から言って、このアームにとって理想的なピックアップであると言える、それ程の美音である。音の入り口で色付けされるのは大変困るのでカラーレーションのない主食としての役割を果してくれる。


EMTを長年愛用しているわたしにはSPU-Gは色付けがないと思っているが、諸兄の意見はGシェルで巧みな色付けが為されているそうだ。確かに日本製のカートリッヂに比べるとカラーレーションを感じるが、むしろ日本製が色づけされているように感じられる。



あすにはSPU Gold-GEが手元に届く筈になっている。しかし、この企みが無駄なことであることも薄々は分っている。スタイラスや線材を変更してもSPU-Gの丸針を聴いた我耳には擬音としか聴こえないだろう。むしろ聴くべきはSPU-Aであろうと思う。


カッティングヘッドの特殊楕円針はカッティングの現場で改良を重ねられ溝を削るために必要な工夫の結果だろうが、リニアトラッキングにおいて楕円針はその役割を果す事が出来ると思う。リニアトラッキングの楕円針とオイルフロートの丸針を使用してこのように感じたのである。



しかし、このような検証記事はオルトフォンユーザに笑われるだろうが自分の装置で我耳で確かめたかった、そして結論が得られたと思う。表現に問題はあるが、いままで柔らかいと思っていたLPレコードの付帯音を消し去るとハイエンドCDに近くなるようだ。


オルトフォンは、いや全てのカートリッヂは周波数レンジを上げることに躍起になっており、スタイラスや線材、磁石、シェルなど数少ない要素の組合せで新製品を作り出そうとしている。しかし、皮肉にも一番初期の丸針と古い線材がハイエンドに最も近い音であったことは驚きであり、また、カートリッヂ遊びが虚しいことであると気付かされた。同時にハイエンドが素晴らしい事も改めて分った。諸先達の異論はあると思うが、そう感じた。

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SPU Gold-GEが届いた。スタイラスを新品に交換したキンキラ金のオルトフォンである。Rigid Floatの針圧を4gに調整してベートーベンやらシューベルトを聴いた。SPU-GともGEとも違う明るい音がする。ハーマン時代最後でも最新の音造りである。オルトフォンファンでもないわたしにとって、このような音だったら敢えてSPU Gold-GEを選択する理由はないと思う。オルトフォンファンなら素晴らしいカートリッヂに違いない、この辺が難しいところだ。オルトフォンを使うなら、CG25DとSPU-Gが自分には良いと予想通りの結果になった。

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全てのレコードやCDがマスターテープを媒体に作成されることを鑑みるとテープ遊びも悪くないかと思うのだが、取敢えずは膨大な初期盤とCDを聴き終えることから始めないとわたしの場合は何にも始まらないような気がする。

二週間に亘りEMT以外のアームとカートリッヂを聴いて気がついた。オルトフォンは聴きっぱなしにしても気にならないのである、EMTであれば一日聴くと聴き疲れで最後はCDをかけてしまうのだがオルトフォンは平気であった。これが何を意味するのか、いまは解からない。
by hal4550 | 2012-05-25 20:36 | EMT